生兵法大傷のもと 護身術を使うリスク

未分類 0 小林拓弥(合気道家)

護身術を指導している動画をよく見かけますが、こういうのは参考程度にとどめた方がいいのではないかと思います。

その理由は2つあります。

  • 生半可な技は機能しない
  • 場合によって加害者になる可能性がある

ではどうするか

  • 危険を察知する感性を研ぎ澄ます
  • 防犯ブザーとフラッシュライトを携帯する
  • 逃げることで生存率を上げることが前提

以上を詳しく書いていきます。

生半可な技は機能しない

例えばこの動画に片手を掴まれた場合は肘を寄せて解除するという技があります。
しかし現実では力がある人に思いっきり掴まれたり、引っ張られて綱引き状態になった場合は肘を寄せることすらままなりません。
必死な相手はただ掴んでくるだけではなく、引くなり押すなりバランスを崩しにかかってきます。崩された状況で技がどれだけ正確に発動できるか想像すると難しいと思います。

自分も柔術の方に本気で腕を掴んでもらったことがありますが、動画と似た技で手を外そうとすると、位置をずらされたり崩されたりして思い通り動けませんでした。当時5年稽古していてもこの有様です。二教はかかって転がすことができましたが、動画を見たり講習をかじる程度の技では成功率は低いでしょう。

覚えないよりはマシではありますが、生兵法は相手を逆上させ、状況をこじらせてしまう可能性もあることを留意しなければなりません。
護身術は最後の最後に使用するものだと思います。

場合によって加害者になる可能性がある

この動画では「その他の対処法」として急所攻撃やカバンや携帯電話の角での打撃を挙げていますが、これにより被害者であるはずの側が暴行や傷害の容疑をかけられる可能性があることは否めません。

「武器対等の原則」によると、正当防衛が認められる事案は、素手VS素手、凶器VS凶器、こちらは素手VS相手は凶器といった場合です。相手が素手で来た所をこちらが武器に相当するものを用いて反撃してしまったら、過剰防衛とみなされる可能性が高くなります。体格差や状況、事情なども考慮されますが、そのような護身術を使う側も実はリスクがあるのです。

また、これはよくある勘違いなのですが、相手が殴ってきた場合に、こちらが殴り返すことは正当防衛になりません。正当防衛とは生命・権利を防衛すべくやむを得ず行われた行為であって、殴り返すことは防衛ではなく反撃であり暴行罪の要件を満たします。相手がケガを負えば傷害罪です。

近年、暴力に対する世間の価値観が変化しており、暴行罪が成立する要件が緩くなっています。昔は殴り合いのケンカを警官が仲裁してなだめるという話をよく聞きましたが、今の時代は相手を小突いた程度でも問答無用で連行される場合があるそうです。

過激な護身術は傷害につながるので注意が必要です。相対した際、相手の目的は何か、どんな体格か、武装しているのか否か見極めて適切な対応が求められます。

危うきに近寄らず、危険を察知する感性を高めておく

護身術の各動画でも言われている通り、護身術を使うような状況にならないように危うきに近寄らず、事前に危険を察知する感性を持つことが重要です。

合法的な護身用具を携帯する

巷には怪しい護身用具がたくさんありますが、オススメできるものは防犯ブザーフラッシュライトです。
防犯ブザーというと子供に持たせるイメージですがこのご時世、大人が持っても良いと思います。また、フラッシュライトは少し訓練が必要ですが目くらましによって状況から離脱する助けになるでしょう。

防犯ブザー

高い防水レベルに大音量。バックアップ用の笛が付いているところが実戦的です。

フラッシュライト

フラッシュライトの中には無駄にサイズが大きかったり、突起が付いていたり物々しいものが時々ありますが、そういったものは凶器とみなされる可能性があるので、一般的なサイズで突起などが無いものがいいでしょう。

これら2つのアイテムも使い方があるのですがまた後で書きます。