呼吸について

身体 0 小林拓弥(合気道家)

呼吸で心を整える

循環器や呼吸器などの制御は自律神経によって行われています。自律神経には交感神経と副交感神経があり、アクセルとブレーキのようにバランスを保ちながら体を制御しています。
人は自分の意思で心拍数などを制御することはできませんが、意識的な呼吸によって間接的に自律神経にアクセスすることはできます。

人が無意識にため息をつくのは、ストレスを緩和させるためだと言われています。ちなみにうちの犬もため息をつくのですが、本能的に息を吸って吐くと心が落ち着くという事を知っているのかもしれません。

呼吸を意識的に制御することで、心拍数を管理したり、不安や恐怖などを和らげる助けになるでしょう。

呼吸で重心・姿勢をコントロールする

呼吸は、胸腔下部にある「横隔膜(ハラミ)」や肋骨の間にある「肋間筋(カルビ)」などによって胸腔を拡大縮小させることで行われています。横隔膜や肋間筋などは「呼吸筋」と呼ばれています。

息が上がり、肩で呼吸するようなヘバッた状態では「呼吸筋」に加え、腹筋や首や肩周りの筋肉も動員して呼吸が補助されます。それらは「補助呼吸筋」と呼ばれています。呼吸運動には上半身の大部分の筋肉が使われている為、スポーツ、格闘技、武道において呼吸法は重要なのです。

胸式呼吸だとわかりやすいと思いますが、息を吸うと胸腔が膨らむ際に肋骨が引き上げられてわずかに重心が高くなります。逆に、腹に溜めるように息を吐くと重心が下がります。

これを様々な動作に取り入れられると思います。

剣の呼吸

息を吸う時は振りかぶり動作の助けになり、息を吐く際は振り下ろし動作の助けになります。息を吐くと重心を落としながら体幹を安定化させる効果があるので剣が安定します。

体術の呼吸

基本的に崩しで吸って投げ終わりで吐くのが一番自然な呼吸だと個人的に思います。
ちなみに柔道の場合も、息を吸いながら「崩し」、「掛け」から「投げ」までの間息を止め、投げ終わりに息を吐くことが多いようです。息を吸って止めている時が他の呼吸位相よりも大きな筋力が発揮できるため理にかなっているのでしょう。

トレランの呼吸

山を数十キロ走る場合、体の効率を考えて行かないと遭難したり命を落とします。
山でのフットワークはロードと違って蹴り足を使わず、荷重移動と足の抜きによって移動のきっかけを作り、着地の際は足裏全体を設置させます。山のフットワークと武道のフットワークは重なる部分が多いと感じています。
下りの着地の際には、体を柔らかくして足裏からの衝撃を肩まで逃がしますが、そこに呼吸法を加えてやるとエネルギーの節約と体幹の安定化が期待できます。

自分の場合は、落下時に息を吐き、着地終わりに息を腹に溜めています。着地の衝撃が呼気を助け、着地終わりに息を腹に溜めることで、呼吸筋・呼吸補助筋がショックアブソーバーのように働いて体幹を安定化させる助けになります。

 

 

山で会った凄い人

ある日山を歩いていた時、後ろから熊鈴が聞こえ、音が結構な早さで大きくなってきているので振り返ってみたら、自分よりもはるかに年上の方がへばっている自分の横を颯爽と走り抜けていきました。下りで行き会った時に年齢を聞いてみてびっくり。「もう70だよぉ」と誇らしげに言っていたのが印象に残っています。自分もあの人のような70歳になりたいと思い日々鍛錬をしています。